エル・アンド・ジー詐欺事件

株式会社エル・アンド・ジー (L&G Co.,Ltd.) の概要と事件の詳細

株式会社エル・アンド・ジー (L&G Co.,Ltd.) は、東京都新宿区に本社を置いていた健康食品販売会社です。この会社は、多数の詐欺事件で摘発され、最終的に破産しました。創業者の波和二は2012年に実刑判決を受け、収監中です。本記事では、エル・アンド・ジーの設立から破産までの経緯、疑似通貨「円天」を用いた詐欺の詳細、およびその影響について詳述します。

会社の設立と初期の事業展開

商号の由来

「エル・アンド・ジー」という商号は、「Ladies & Gentlemen」の略称です。この名称は、顧客に対する丁寧なサービスと信頼を示すことを意図していました。

事業の展開

エル・アンド・ジーは、1987年8月に波和二によって設立されました。当初は健康寝具や健康食品の販売を主な事業としていました。1993年には本社を東京都渋谷区から新宿区に移転し、事業の拡大を図りました。1996年にはデジタル・ウェーブ株式会社を設立し、事業の多角化を進めました。

2001年には、株式会社L&Gあかりを設立し、「協力金」の名目で出資の募集を開始しました。この時期から、エル・アンド・ジーは大規模な資金集めを行うようになりました。2005年には「実践 あかり天国」という株主・社員研修会をスタートさせ、特定非営利活動法人あかり研究所を設立しました。さらに、2006年には「円天市場GINZA」をオープンし、全国各地で無料コンサートを開催して会員を募集しました。

疑似通貨「円天」による詐欺の詳細

円天の仕組み

エル・アンド・ジーは、疑似通貨「円天」を電子マネーとして運用していました。公式サイトでは、10万円以上を預けてあかり会員になると、1年ごとに預けた金額と同額の円天を受け取ることができるとされていました。年利100%の金利が払われるとされ、受け取った円天は「円天市場」で利用可能とされていました。

波和二会長は、自身のブログで、円天には「円天市場」と「元金円天市場」の2種類の利用法があると説明していました。後者は、現行の通貨を稼ぐ目的で運用される円天と称していました。しかし、波会長自身は、実際には円天をほとんど使用していなかったことが明らかにされています。

円天の実態

円天の実態は、非常に限られた店舗でしか利用できないものでした。購入単位が非常に大きかったにもかかわらず、一般的な電子マネーとは比較にならないほど対応店舗が少なく、機能は家電量販店のポイント程度でした。これは、偽造通貨に近い扱いを受けるほどでした。

詐欺事件の経緯と摘発

資金集めと資金繰りの悪化

エル・アンド・ジーは、2001年から円天を発行し、「100万円を預ければ3カ月ごとに9万円を支払う」との説明で多額の出資金を集めました。しかし、2007年1月頃から資金繰りが悪化し、従業員の大半を解雇しました。現金配当を円天に切り替えましたが、円天による配当の支払いも停止し、企業活動は事実上停止しました。

2007年5月13日の「真相報道 バンキシャ!」では、出資金が戻らず、さらに出資を強要するような書類を突きつけられた会員が報じられました。波会長は、2008年2月まで保証金の返還を停止していたと発言しました。この報道を受けて、エル・アンド・ジーの詐欺的な商法が明るみに出ました。

強制捜査と逮捕

2007年10月3日、警視庁および宮城・福島県警察の合同捜査本部は、出資法違反容疑でエル・アンド・ジーを一斉捜索しました。会社や波会長の自宅など全国60ヶ所の家宅捜索が行われ、段ボール箱1000個以上の資料が押収されました。全国約5万人から1000億円を超える資金を集めた詐欺容疑での立件が視野に入れられ、過去最大規模のマルチ商法事件に発展するおそれがあると報じられました。

波和二会長は、1960年代からマルチ商法の会社「APOジャパン」を設立し、1978年に詐欺で実刑判決を受けていました。彼は、日本で初めて法的処分を受けたマルチ商法の会社の創設者でした。

有名人の広告塔としての利用

演歌歌手・タレントの起用

エル・アンド・ジーは、会員募集や会社の信用を高めるために、多数の演歌歌手やタレントを広告塔として起用しました。以下の著名な人物が、関連団体を通じて無料コンサートを行い、会員を募集しました。

  • 北原ミレイ
  • キム・ヨンジャ
  • 桂銀淑
  • 研ナオコ
  • 伍代夏子
  • 小林旭
  • 香西かおり
  • 坂本冬美
  • 島倉千代子
  • 瀬川瑛子
  • 千昌夫
  • 平浩二
  • 中村美律子
  • 長山洋子
  • 錦野旦
  • 日野美歌
  • 藤あや子
  • 細川たかし
  • 松方弘樹
  • 松崎しげる
  • 美川憲一
  • 三田明
  • 八代亜紀

広告塔としての影響

細川たかしは、1回の出演で1200万円のギャラを受け取り、50回以上出演しました。彼は他の歌手を紹介し、その出演料の一部を紹介料として受け取っていました。このため、2007年の第58回NHK紅白歌合戦の出場を辞退しました。

また、慶應義塾大学医学部の元准教授である森山雅美がL&Gの講演に出席し、波の結婚式では金田正一が仲人を務めました。

その他の関連事業

「コスモガール」の存在

2003年7月、関連会社「ロイヤリティ・コスモ」が設立されました。この会社の社員は「コスモガール」と呼ばれる女性だけで、主に六本木のキャバクラ嬢が勧誘されました。コスモガールは月給30万円で、会員向けイベントの受付や男性社員のコンパニオンを務めました。

関連会社

エル・アンド・ジーには以下の関連会社がありました。

  • デジタル・ウェーブ株式会社
  • 株式会社L&Gあかり
  • 株式会社SROエリート
  • 株式会社SRユニオン
  • NPO法人あかり研究所

二次被害の発生

別の詐欺師による標的

エル・アンド・ジーの被害者は、さらに別の詐欺師の標的にされることが多くありました。例えば、菱和イマジネーションは、被害者に対してエル・アンド・ジーが会社更生法により吸収合併したとの説明で新たな出資を募りました。

エル・アンド・ジー被害対策弁護団を名乗る詐欺や、その他の証券会社、被害回復のための法人を名乗る詐欺も発生しました。これらの詐欺は、協力金や円天、あかり価格の証書を買い取ると称して、さらに費用を請求する手口を使っていました。

波和二による弁護団業務の妨害

波和二は自身のブログ上で、L&G被害対策弁護団の業務を妨害する書き込みを行いました。例えば、「弁護団を後3日で解散する」と偽り、着手金の返還を求める詐欺的な書き込みを行いました。これは偽計による業務妨害に該当する可能性が高いとされています。

結論

株式会社エル・アンド・ジーは、疑似通貨「円天」を用いた詐欺によって多くの被害者を出し、最終的に破産に至りました。この事件は、詐欺手法の巧妙さと、その被害の大規模さを示しています。被害者の救済と再発防止のためには、より厳格な法的措置と社会的な監視が必要です。

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