ウィッツ青山学園高等学校の設立から閉校までの経緯
ウィッツ青山学園高等学校は、三重県伊賀市に2005年9月から2017年3月まで存在した株式会社立高等学校です。この学校は広域通信制と全日制の教育課程を併せ持っていましたが、2017年4月に学校法人神村学園に運営を譲渡され、現在は神村学園高等部伊賀分校として運営されています。本記事では、ウィッツ青山学園高等学校の設立背景、運営の変遷、不祥事とその影響について詳しく解説します。
設立の背景
特区認定と学校設立
ウィッツ青山学園高等学校は、旧青山町が国に申請し、伊賀市になってから内閣府および文部科学省より「伊賀市意育教育特区」の認定を受けて設立されました。この特区認定により、2005年9月に株式会社立高等学校として開校しました。特区の最大の特徴は、本校職員立会いのもとで伊賀市内の様々な施設で生徒が体験学習を行う「体験型スクーリング」を実施することでした。
運営体制
設立当初、ウィッツ青山学園高等学校の運営は「株式会社ウィッツ」によって行われていました。ウィッツは、大阪市にある大証2部上場の株式会社WINの子会社として設立され、WINの創設者は下村前文科相の後援会「全国博友会」の会長、森本一氏でした。理事長には元青山町長の猪上泰氏が、校長には株式会社ウィッツ取締役の畑康裕氏が就任しました。
学校の特徴と教育方針
体験型スクーリング
ウィッツ青山学園高等学校の特徴は、体験型スクーリングを取り入れた新しい教育方針でした。生徒は伊賀市内の様々な施設で体験学習を行い、学ぶことができました。例えば、伊賀焼体験や伊賀忍者村、伊賀城などでの体験が学習の一環として取り入れられていました。
全日制と寮制
全日制の生徒は寮生活を選択することができ、校舎には男女別の学生寮が設置されていました。教師や校長も生徒と寝食を共にし、3年間を共に過ごすことで、深い信頼関係を築くことを目指しました。
校歌と文化活動
ウィッツ青山学園高等学校の校歌はシンガーソングライターの染谷俊氏が歌う「きみに逢えて、僕は」であり、この曲はCDとして生徒に配布されました。
運営の変遷と問題
東理ホールディングスへの吸収合併
2005年に設立されたウィッツは、経営難に陥ったWINの子会社として運営されていましたが、2007年3月に事業持ち株会社「東理ホールディングス」によって買収され、子会社となりました。この買収により、経営方針が徐々に変化し、設立当初の教育理念や方針に対する影響が出始めました。
教員不足と運営の問題
学校設立当初から教員不足が問題となっており、伊賀本校では「英語」と「情報」の授業を担当する女性非常勤講師が教員免許が失効したまま授業を続けていたことが発覚しました。この不正授業により、在校生と卒業生の単位が無効となり、大きな混乱を引き起こしました。
一連の不祥事とその影響
学習指導要領違反
ウィッツ青山学園高等学校は、開校から7〜8年間は適切な授業とスクーリングを実施していましたが、2011年頃から問題が顕在化しました。全国のLETSキャンパスの生徒数が増加し、開校当初の教員数では対応が困難となりました。この状況に対し、当時の校長である畑康裕氏やLETS代表者協議会の有志は、親会社である東理ホールディングスに対し、教員数の増員やスクーリング会場の確保を求めましたが、利益減少を理由に拒否されました。
不適切な授業内容
伊賀市内の施設や本校でのスクーリングを実施せずに、USJへの旅行やお土産購入時の釣銭計算を授業とみなすなど、学習指導要領に反する授業が行われていたことが判明しました。このため、伊賀市は新入生募集の一時停止を要請し、文部科学省も改善指導を行いました。
法的措置と再履修の実施
再履修の実施と行政指導
2016年に伊賀市は新入生募集の停止を求めましたが、ウィッツはこれを拒否しました。最終的に、伊賀市教育委員会は再履修の実施と卒業見込みの生徒への対応を求め、文部科学省は特例として「仮卒業」を認めました。この措置により、再履修を実施し、未履修の生徒が学習をやり直す機会を提供しました。
再履修費用の未払いと法的措置
再履修授業の実施費用が未払いのままとなり、伊賀市はウィッツに対して法的手段を検討しました。最終的に東理ホールディングスが伊賀市に対して未払い金を支払うこととなりました。
就学支援金不正受給
不正受給の手口
2010年から始まった「就学支援金」制度を利用し、東理ホールディングス教育部長の馬場正彦氏は、不正に生徒を勧誘し、就学支援金を受給しました。この不正行為により、東京地検特捜部が捜査を行い、馬場氏は詐欺容疑で逮捕されました。
法的措置と判決
馬場氏は2017年3月に懲役2年6月、執行猶予5年の有罪判決を受けました。この事件により、東理ホールディングスは大きな打撃を受け、信頼を失いました。
学校法人化とその後
第二次学校法人化の試み
東理ホールディングスは、ウィッツ青山学園高等学校を「学校法人化」するための取り組みを再度行いましたが、この試みも失敗に終わりました。その結果、学校は閉校し、運営は学校法人神村学園に引き継がれました。
訴訟と裁判
LETS代表者協議会の元代表者11名は、東理ホールディングス、福村社長、馬場正彦氏を相手取り、損害賠償請求を行いました。最終的に、大阪地方裁判所と大阪高等裁判所で東理ホールディングスらの責任が認められ、損害賠償が命じられました。
まとめ
ウィッツ青山学園高等学校の設立から閉校までの経緯は、教育機関の運営における課題と問題点を浮き彫りにしました。設立当初の理想的な教育方針から一転し、不祥事や法的トラブルが続発する結果となりました。この事件を通じて、教育機関の透明性と誠実性の確保、内部監査の強化、法的整備の重要性が再認識されました。今後も、同様の問題を未然に防ぐための取り組みが求められます。