タイで発生している「お金見せて」詐欺について
犯罪専門家として、タイで急増している「お金見せて」詐欺について解説します。この手口は日本人旅行者を狙ったもので、現地での旅行中に不意に声をかけられ、日本円を見せるよう頼まれた後に、現金を盗まれるというものです。特に夏休みの旅行シーズンには被害が増加する恐れがあり、在タイ日本大使館は注意を呼びかけています。
被害の実態と事例
在タイ日本大使館によると、被害者の一人である男性は6月、バンコクの中心部にある高架鉄道BTSナナ駅近くの繁華街で、男女二人組に声をかけられました。彼らは男性に写真を撮ってほしいと依頼し、撮影に応じた後、男性に「ドバイのお金」を見せ、「日本のお札を見たい」と要求しました。男性は財布を取り出し、中身を見せた後、二人と別れましたが、数時間後に4万円と1万3千バーツ(約5万7千円)が盗まれていることに気づきました。
このケースに代表されるように、犯人は中東系の男女二人組で、英語や片言の日本語を話し、巧妙な手口で現金を盗み取ります。さらに、子供を連れて「この子に日本円を見せてあげたい」と頼むケースも報告されています。
被害の増加とその背景
2024年1月から6月にかけて、大使館に報告された被害相談は12件(うち3件は未遂)で、被害総額は約26万円に上ります。同様の手口は以前から確認されていますが、特にコロナ禍以降、被害が急増しています。2022年には1件、2023年には12件の被害が報告されており、2024年にはその倍のペースで増加しています。特に20代の若者が被害に遭うケースが多いです。
被害はバンコクの繁華街や寺院などの観光地を中心に発生していますが、5月には日本人駐在員の多いタイ中部シラチャでも確認されています。大使館は「報告されている被害は氷山の一角に過ぎない。声をかけられた場合は相手にせず、すぐに立ち去るように」と警告しています。
詐欺の手口とその特徴
この「お金見せて」詐欺は、巧妙な手口を駆使して行われます。犯人たちはまず、旅行者の警戒心を解くために親しみやすい態度で接近します。写真撮影を頼んだり、外国のお金を見せたりすることで、被害者に対して信頼感を与えます。その後、日本円を見せるよう要求し、財布を出させるのです。
犯人たちは「マジシャンのような手つき」で現金を盗み取ります。被害者が気づくのは、二人組と別れてからしばらく経ってからです。犯人はまた、子供を連れていることもあり、旅行者の警戒心をさらに下げる効果を狙っています。
具体的な事例
以下に具体的な事例を紹介します。
- バンコクの繁華街での被害
ある日本人男性は、バンコクのナナ駅近くの繁華街で、写真撮影を頼まれました。撮影後、犯人は「ドバイのお金」を見せて「日本のお札を見たい」と要求しました。男性は財布を出し、中身を見せましたが、二人と別れた後、現金が盗まれていることに気づきました。 - 寺院での被害
別のケースでは、バンコクの有名な寺院で日本人女性が被害に遭いました。彼女は外国人の家族に声をかけられ、子供に日本円を見せてほしいと頼まれました。女性が財布を取り出し、中身を見せた後、現金が盗まれていることに気づきました。 - シラチャでの被害
タイ中部のシラチャでも同様の被害が報告されています。日本人駐在員が繁華街で声をかけられ、外国のお金を見せられた後、日本円を見せるよう要求されました。財布を取り出した後、現金が盗まれていることに気づきました。
被害の防止策
このような詐欺被害を防ぐためには、以下のような対策が有効です。
- 警戒心を持つ
知らない人から声をかけられた場合は、警戒心を持ちましょう。特に、外国のお金を見せてきたり、写真撮影を頼まれたりする場合は注意が必要です。 - 財布を見せない
知らない人に財布を見せることは避けましょう。現金を見せるよう要求された場合は、きっぱりと断ることが大切です。 - すぐに立ち去る
不審な状況に遭遇した場合は、すぐにその場を立ち去りましょう。犯人に対しては、できるだけ関わらないようにすることが重要です。 - 地元の情報をチェックする
旅行前には、地元の最新の治安情報をチェックしましょう。在タイ日本大使館や観光案内所などから最新情報を得ることが大切です。 - 被害に遭った場合の対処法
万が一、被害に遭った場合は、速やかに警察や大使館に連絡しましょう。また、旅行保険に加入している場合は、保険会社にも連絡し、被害の報告を行うことが重要です。
旅行者への呼びかけ
在タイ日本大使館は、日本人旅行者に対して「お金見せて詐欺」に関する注意喚起を行っています。特に、夏休みの旅行シーズンには被害が増加する恐れがあるため、以下の点に注意するよう呼びかけています。
- 現金の持ち歩きは最小限に
旅行中は、必要最小限の現金だけを持ち歩くようにしましょう。大金を持ち歩くことは避け、クレジットカードやデビットカードを利用することをおすすめします。 - 複数の場所に現金を分散
現金を一箇所にまとめて持ち歩くのではなく、複数の場所に分散して保管することが大切です。例えば、財布に一部を入れ、残りはホテルのセーフティーボックスに保管するなどの対策が有効です。 - 不審な人物に注意
特に観光地では、不審な人物に注意を払いましょう。写真撮影を頼んできたり、外国のお金を見せたりする人には警戒し、近づかないようにしましょう。 - 緊急連絡先の確認
旅行前に、現地の緊急連絡先や大使館の連絡先を確認しておきましょう。万が一の事態に備え、緊急連絡先をすぐに利用できるようにしておくことが重要です。
まとめ
タイで急増している「お金見せて」詐欺は、日本人旅行者を狙った巧妙な手口です。旅行者は警戒心を持ち、現金を見せないようにすることが重要です。また、被害に遭った場合は、速やかに警察や大使館に連絡し、適切な対処を行いましょう。安全で楽しい旅行を過ごすためには、事前の準備と警戒が不可欠です。