頂き女子りりちゃん事件

頂き女子りりちゃん事件の詳細解説

起訴状による事実

2021年3月から2023年8月にかけて、横浜市の50代男性は「滞納した家賃の支払いに充てるお金を貸してほしい」といった嘘の理由で銀行振り込みを利用し、計約1億1000万円を詐取されました。

さらに、同年4月から8月には茨城県の50代男性に対し「親と縁を切りたいが、養育費を返さないといけない」「借金を返せば同居できる」などと嘘をつき、生命保険を解約させるなどして計約3800万円をだまし取ったとされています。

詐欺幇助の詳細

詐欺幇助についても言及されており、マニュアルの購入を希望した女子大生(後に詐欺罪で執行猶予判決を受ける)が男性から現金をだまし取る目的であることを知りながら、2022年6月にマニュアルを販売し助言した結果、現金計1000万円余を詐取する手助けをしたとされています。

初公判の様子

初公判は昨年11月2日に開かれ、渡辺被告が証言台に立ちました。彼は黒髪にメガネ、紺色のトレーナー、黒っぽいズボンを着用し、動画で見せていた華やかな雰囲気とは全く異なる姿でした。この日、審理されたのは詐欺幇助罪のみであり、彼は罪の意識を感じていない様子でした。罪状認否で起訴状の内容に間違いがないか問われ「ないです」と認めたものの、裁判官から名前や住所、仕事について問われた際の返答は非常に軽薄で、反省している様子は見られませんでした。

検察側の冒頭陳述

冒頭陳述で検察側は、渡辺被告がホストクラブへの支払いに困った際に風俗店での客からの援助体験から詐欺を繰り返すようになったと指摘しました。彼はマニュアルをSNSで販売し、購入を希望した女子大生にリンクを送信して2万8000円を受領しました。

証拠調べの結果

証拠調べでは、渡辺被告がマニュアル販売で2000万円弱を売り上げ、数十人の男性から計約3億円を詐取していたことが明らかにされました。

第2回公判の内容

第2回公判は昨年12月6日に開かれ、検察側は渡辺被告が遅くとも2018年頃からホストクラブで豪遊するようになり、ホストに1回につき数百万から数千万円を注ぎ込んでいたと指摘しました。これらの資金は、マッチングアプリで知り合った中高年男性からだまし取ったものでした。

検察側は渡辺被告が「お気に入りのホストをナンバーワンにすることに生きる意味や価値があった」との供述調書を読み上げました。この東京・歌舞伎町の店のホストは詐欺で得た金と知りながら受領したとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)の容疑で逮捕、起訴されています。

論告求刑公判の内容

今年3月15日には論告求刑公判が開かれ、検察側はホストを売り上げナンバーワンにするために詐欺に及んだと述べました。検察側は「動機は短絡的で身勝手であり、被害男性の心情につけ込んだ卑劣な犯行で、マニュアルを作成するなど十分な計画性も認められ、同種の犯罪を助長した」と厳しく指弾しました。

渡辺被告の弁明と反省

渡辺被告は被告人質問に対し「悪いことをしている感覚はあったが、ホストのために詐欺をするのが歌舞伎町の正義だと思っていた」「人の気持ちを踏みにじったこと、女の子を洗脳して申し訳ない」と後悔の言葉を述べました。そして「お金は少しずつでも返したい」と述べた後、突然泣き出し、公判が一時中断される場面もありました。

弁護側の主張

弁護側は最終弁論で渡辺被告の生い立ちを紹介し、父親からの暴行や虐待を受けたことが孤独感を生み、ホストクラブ通いにのめり込む原因となったと強調しました。また「被告はホストに利用されただけであり、社会的制裁は十分に受けている」として寛大な処分を求めました。

判決の見通し

渡辺被告の量刑について、一般的に司法関係者の間では「判決は求刑の7~8割掛け」と言われています。情状部分を考慮しても、懲役10年前後の可能性は高いとされています。

さらに渡辺被告は詐欺・詐欺幇助罪とは別に、詐取した約1億1000万円を所得として申告せず、2021年から2022年分の所得税約4000万円を脱税したとして、所得税法違反罪にも問われています。こうした犯罪収益も「雑所得」に該当し、確定申告と納税が必要です。

脱税事件の処理

脱税事件でも、修正申告と納税によって情状酌量が認められるケースが多いですが、渡辺被告には修正申告や納税を行う手持ちがない可能性が高いです。詐欺と詐欺幇助罪での量刑が懲役10年前後だったとしても、罰金1200万円は減額されず、脱税での実刑が加算されれば懲役12~13年は確実と見られます。さらに脱税した約4000万円プラス重加算税が課され、出所後には3億円近い納税義務が残る可能性があります。

生活の本当の罰

軽い気持ちで始めたであろう「頂き」生活の本当の意味での罰は、10年超の懲役ではなく、出所後の余生であるかもしれません。彼が再び社会に出た時、待ち受けているのは多額の納税義務と経済的困難です。

結論

渡辺被告のケースは、詐欺犯罪がもたらす悲惨な結果を如実に示しています。軽はずみな行動が引き起こした長期の懲役刑と多額の納税義務は、彼の将来に大きな影を落とすことでしょう。詐欺行為の被害者だけでなく、加害者自身もその行為の代償を高く支払わなければならないという現実を教えてくれる事例です。

おすすめの記事